音楽大学に通うことの意味

音楽の道を究めたいなら…

音楽を勉強したいと真剣に思ったとき、まず頭に浮かぶのは『音楽大学への進学』ではないでしょうか。

専門とする大学に進学すれば、毎日の授業や学生生活の中で頻繁に音楽に触れることができますし、専門的な学習を重ねることができます。

また、同じように音楽を勉強したいと思って集まった同志たちが同級生や先輩・後輩ということになるので、お互いに切磋琢磨して技術を磨いていくことができます。

しかし、音楽大学を卒業しても、全員がプロの音楽家になるわけではありません。

世の中で『音楽で生活していける』という方はほんの一握りですし、そのためには人並みはずれた高い演奏技術やカリスマ性などが必要になってきます。

そして、何より大切なのは、『自分はこういった音楽活動がしたい』という信念です。

音楽大学を卒業してフリーの演奏家になる方はとても多いですが、そういった場合音楽を専門とする大学に入ったことに意味を感じやすいようです。

なぜなら、フリーの演奏家にとって演奏技術と同じくらい大切なのは『人脈』だからです。

仕事を提供してくれるのも、演奏を売り込むのも、そして一緒に演奏をするのも全て『人』です。

仕事の受注・発注という意味での『縦の人脈』、演奏活動仲間としてアンサンブルを組んだり伴奏をしてもらったりする『横の繋がり』の両方があって初めて、フリーランスの演奏家は音楽活動をすることが出来ます。

そして、そういった人脈を作り上げていくのに、音楽大学という場所は最適なのです。

音楽大学で学べること

師事している先生や先輩から仕事を紹介されたり、それを同級生である演奏仲間と共に取り組んだりということは、音大生活の中ではよく聞く話です。

また、ピアノやハープなど一人でも演奏活動を行える楽器はありますが、声楽や管楽器などは単音の楽器なので、一人で演奏活動を行うのは非常に困難です。

その際にはアンサンブルを組んだり、ピアノ奏者に伴奏をお願いしたりするわけですが、自分とフィーリングの合う演奏をする仲間を探すのにも、音楽大学であれば苦労しません。

様々な仲間と演奏を経験していくうちに、一緒に演奏活動をしていきたいと思える奏者を見つけ出し、卒業後もペアを組んだりアンサンブル団体として活動していくという経緯は、フリーランスの演奏家の中ではよく聞くパターンだと言えます。

個人で楽器を練習したり先生に師事をして学んでいても、他の演奏者と知り合いになったり一緒に演奏をしたりということはなかなか出来ないので、大きなくくりでの『音楽家集団』である音大に所属することは、将来の演奏活動を見据えてみても非常に意味のあることです。

また、何らかの形で、音楽家を派遣する音楽事務所に所属している方も多いようです。

クラシックのソロ演奏者を集めた事務所もありますし、パーティに演奏家を派遣する事務所、結婚式に聖歌隊やオルガン奏者を派遣することを専門としている事務所もあります。

そういったところに所属していると、自分で演奏家としての売り込みに奔走せずとも、演奏する場を提供してもらえることがあるのが利点です。

そして、そういった音楽事務所に所属する際にも、音大出身であるという事実があれば話が進みやすくなります。

大学を出ているということは、それ相当の技術や基本的な音楽知識、音楽能力は備えているという証明になりますので、音楽事務所側も安心して雇うことができるというわけです。

音楽家として大切なことが学べる

そういった事務所に欠員が出た時や、特定の楽器奏者を探している時などにも、やはり始めに声をかけるのは『知り合いの音楽家』です。

そういう時に声をかけてもらう人間関係を気づいていくためにも、大学生活を音楽漬けで過ごすということには大きな意味があります。

先述したような『技術の切磋琢磨』という面もありますが、音楽活動をする上で非常に重要な『協調性』『アンサンブル(周りに合わせる)能力』を育むためには、小編成アンサンブルやオーケストラ、合唱などの『周りと合わせる必要がある』演奏形態を数多く体験していることが大切になってきます。

大学の授業という形でその修行を積むことができれば、卒業後の音楽家としての能力も飛躍的に上がっていくことは想像に難くありません。

いかがでしたでしょうか。

個人の演奏技術という意味では、大学に進学しなくとも腕を磨いていくことは出来ます。

しかし、音楽家として大切な『人との繋がり』や『協調性のある演奏技術』を手に入れるためには、やはり音楽大学に所属するということは大きな意味があることを、お分り頂けたのではないかと思います。

最終的にどんな音楽活動がしたいのか、そんな思いを持ちながら大学生活の4年間を送ることができると、さらにその年月は有意義なものとなっていくでしょう。

大学は音楽家を志す上で重要な場ではありますが、あくまで『人を集め、知識や技術を提供してくれる場所』なので、最終的には自分がどうありたいかという思いが、一番大切になってきます。